那覇家庭裁判所石垣支部 昭和62年(家)111号 審判 1990年5月30日
申立人 沖縄県立○○園
被相続人 鈴木種三
主文
申立人に対し、被相続人鈴木種三の相続財産である別紙財産目録記載の財産を分与する。
理由
1 申立人は、主文と同旨の審判を求め、被相続人と特別の縁故関係があった旨主張する。
2 そこで検討すると、昭和61年(家)第84号相続財産管理人選任申立事件の記録及び本件記録によれば、次の事実が認められる。
(1) 被相続人鈴木種三は、別紙財産目録記載の財産を所有していたが、昭和60年6月6日相続人がいないまま死亡した。
(2) 昭和61年8月仲田宗弘が本件相続財産管理人に選任され、民法957条、同958条の手続が行われたが、相続債権者、受遺者又は相続人であるとして権利を主張するものはなかった。
(3) 被相続人は、昭和46年4月申立人である○○園に入所措置がとられ、その後死亡するに至るまで、○○園で生活をしていた。昭和52年ころから衰弱が激しくなり、歩行、入浴、排便等においても介助を必要とするようになり、同園の職員がその世話をし、死亡に際しては、同園の職員が葬儀を行い、その後も同園の納骨堂に遺骨を安置し、その後の供養も行っている。
(4) 申立人は、沖縄県の委託を受けた社会福祉法人沖縄県社会福祉事業団が管理する県立の養護老人ホーム及び特別養護老人ホームであり、法人格を有しないが、独立した施設として、寄付や贈与を受けており、これについて理事長の承認を要するとされているものの、実質的には事後の届出に近い形で運用されており、申立人がその当事者となっている。
3 以上の事実によれば、身寄りのない被相続人としては、その機会があれば、世話を受けた申立人に対し、贈与もしくは遺贈をしたであろうと推認され、申立人に所属する職員も施設としてその療養看護に当たってきたものと認められ、申立人には、民法958条の3第1項に規定する特別の縁故があると認めるのが相当である。
よって、主文のとおり審判する。
(家事審判官 大塚正之)
(別紙)財産目録
1 普通預金(○○銀行口座番号××××××)金1,181,387円
2 動産
(1) 車椅子 1台
(2) テレビ 1台
(3) 毛布 2枚
(4) 電気剃刀機 1機
(5) エアーマットレス 1台
(6) ラジオカセット 1器
(7) 扇風機 1台
(8) あんま機 1台
(9) 印鑑 1個